アルミ鋳造、鋳物、金型を一貫請負

アルミ鋳物のFAQ:よくある質問と疑問を解決

アルミ鋳物部品(アルミ鋳造部品)は、鉄鋳物の約1/3の軽さでありながら高い強度を持ち、自動車部品や建材、機械装置など多彩な分野で活用されています。ただし、鋳造特有の肉厚設計や寸法公差、製法ごとの適用範囲など、初めて扱う方には分かりにくいポイントが少なくありません。この記事では、現場で寄せられる代表的な技術的・コスト・納期に関する疑問を整理し、Q&A形式でわかりやすく解説します。調達や設計業務の参考となる実践的な知見をお届けします。

アルミ鋳物とは何ですか?どんな特徴がありますか?

アルミ鋳造部品(以下、アルミ鋳物)は、アルミニウムを約660℃以上に加熱して溶融し、鋳型に流し込んで一体成形する技術です。鉄鋳物の約1/3の軽さでありながら高い機械的強度を発揮し、自動車部品や建材、産業機械、電子機器筐体など幅広い分野で利用されています。さらに、切削加工では難しい中空形状や複雑曲面を一度に作れるため、部品点数の削減とコスト効率化にも寄与します。

特徴と利点:軽量・耐食性・複雑形状対応

  • 軽量性:比重約2.7で鉄の約1/3。車両や可搬機器の軽量化に貢献。
  • 耐食性:表面に自然に形成される酸化皮膜が防食バリアとなり、屋外設備や水回り部品にも最適。
  • 複雑形状対応:中空構造や薄肉成形、一体化デザインが可能で、組立工数や材料ロスを削減。
  • 熱伝導性:鉄の約3倍の熱伝導率でヒートシンクや放熱部品に適合。

これらの特性により、鋳造部品単体での軽量化と機能統合が実現し、生産工程の最適化が図れます。

アルミダイカストとの違い

アルミ鋳物とよく比較されるアルミダイカストは、高圧で金型内に溶融金属を射出する方式です。主な違いは以下の通りです。

項目 アルミ鋳物(砂型・重力鋳造) アルミダイカスト
初期費用 低~中(30万~80万円/型) 高額(100万~300万円/型)
寸法精度 中程度(±0.5~1.0mm) 高精度(±0.1~0.3mm)
ロット対応 小~中(数十~数万個) 大量(数万個以上)
設計自由度 高い(肉厚変更・簡易修正可) 制約あり(薄肉・複雑曲面可)

試作や多品種小ロットでの柔軟性を重視するなら砂型・重力鋳造、薄肉/高精度・大量生産にはダイカストが適しています。

代表的な材質(AC4Cなど)の用途別解説

JIS規格で定められる代表的なアルミ鋳物合金と主な用途を示します。

材質 特徴 主な用途
AC4C 強度・耐食性・溶接性に優れる 建設機械部品、バルブ、屋外筐体
AC2A 鋳造性良好・コスト低 汎用機械部品、ホイール
ADC12 ダイカスト向け・寸法安定性が高い 自動車小物部品、モーターハウジング

特にAC4Cは耐食性と高強度のバランスが良く、海外工場での採用率も高いため、調達時の必須チェック項目です。

製造・設計に関するよくある質問

Q1:アルミ鋳物の小ロット試作は対応していますか?

はい。ダイワ軽合金ベトナムでは、砂型鋳造や重力鋳造を駆使し、型代を抑えた小ロット試作に対応しています。通常の金型費用は30万~100万円/型ですが、砂型鋳造なら50%程度削減できるケースもあります。設計図面確定後のリードタイムは約15~20営業日が目安。設計変更にも柔軟に対応できるため、コストとスピードを両立したプロジェクトに最適です。

Q2:寸法公差(アルミ鋳物)はどこまで対応可能ですか?

寸法公差は鋳造方式と仕上げ方法によって変わります。

  • 砂型鋳造:±0.5~1.0 mm
  • 重力鋳造(金型使用)/低圧鋳造:±0.2~0.5 mm
  • CNC切削仕上げ(CNC:コンピュータ数値制御切削機械):±0.01 mm程度

重要箇所の公差指定が厳しい場合は、あらかじめ加工余裕を見込んだ設計とし、鋳造後にCNC加工で微調整する「鋳造+機械加工の一貫フロー」を推奨します。

Q3:鋳造用型代の目安はいくらですか?

型代は製法・合金種・形状の複雑さで上下します。

  • 砂型鋳造:30万~50万円/型
  • 重力鋳造(金型使用):50万~80万円/型
  • 高圧ダイカスト金型:100万~300万円/型

金型は長期的に単価を抑える効果がありますが、初期費用が大きいため、10万~20万個以上の量産が見込める場合にメリットが顕著です。

Q4:どの鋳造方式(砂型/金型/重力鋳造)を選ぶべきですか?

以下の4項目を軸に方式を選定してください。

  1. ロット数とコスト
    • 小ロット(~数百個):砂型鋳造
    • 中ロット(数千~数万個):重力鋳造/低圧鋳造
    • 大ロット(数十万個以上):高圧ダイカスト
  2. 精度と形状の複雑さ
    • 中空構造や複雑形状:砂型鋳造が設計自由度大
    • 薄肉・高精度:ダイカストが有利
  3. 材質と機械的特性
    • 耐食性・耐力重視:AC4Cを用いた重力鋳造
    • コスト重視・加工性重視:AC2A/ADC12でのダイカスト
  4. 納期と変更対応力
    • 短納期:砂型で型製作を簡素化
    • 仕様変更:砂型なら再設計コストが低く、フレキシブル

これらを総合的に判断し、設計図面作成時に最適な鋳造方式を決定すると、コスト・品質・納期のバランスが整います。

加工・仕上げに関するFAQ

Q5:機械加工まで社内一貫体制で対応できますか?

はい。ダイワ軽合金ベトナムでは、アルミ鋳物から仕上げ加工まで社内で一貫体制を構築しています。

  • CNC切削加工(CNC:コンピュータ数値制御切削機械) 5軸・3軸マシニングセンタを活用し、公差±0.01 mm の高精度仕上げを実現。
  • 旋盤加工 中空部品や軸物の内径・外径加工を含む多様な形状に対応。
  • タップ立て・穴あけ M2~M16程度までのねじ切り作業や穴あけが可能。

工程を社内で完結させることで、段取り時間を短縮し、納期厳守とトレーサビリティの確保を両立します。


Q6:塗装・研磨・アルマイトなどの表面処理は可能ですか?

可能です。用途や意匠、耐候性要件に応じて下記の表面仕上げをご提案します。

  1. アルマイト処理
    • 硬質アルマイト:耐摩耗性重視
    • 着色アルマイト:外観デザイン性向上
  2. 粉体塗装/溶剤塗装
    • 屋外耐候性(耐UV・耐塩害)
    • 食品機器向け(FDA適合塗料使用可)
  3. 研磨・バフ仕上げ
    • ヘアライン、鏡面仕上げなど多彩なパターン
    • 表面平滑化によるさらに強化された耐食性

いずれも前処理(脱脂・前研磨)を徹底し、密着性と耐久性を最大化します。


Q7:鋳造欠陥(巣・ヒケ)の対策は?

巣(空洞)やヒケ(収縮空洞)は鋳造品質を左右します。以下の対策で発生を最小限に抑制します。

  1. 型設計の最適化
    • リザー(給湯口)配置による溶融金属の均等補給
    • チル(冷却材)による局所凝固速度の制御
  2. 鋳造条件の厳密管理
    • 溶湯温度・流速の最適化で乱流を低減
    • 脱ガス処理(真空引き・窒素パージ)でガス巻き込みを防止
  3. インライン検査
    • X線検査による内部欠陥検出
    • 浸透探傷や浸水試験で表面巣の早期識別

これらを組み合わせることで、再現性の高いアルミ鋳物品質を実現します。


Q8:アルミ鋳物の溶接や接着はできますか?

可能ですが、合金種および用途に応じた方法選定が不可欠です。

  • 溶接
    • TIG溶接:AC4C などに適したアルミ用ワイヤーで高品質仕上げ
    • MIG溶接:薄板~中板向けのスピード重視現場補修
    • 前処理(酸化皮膜除去)・後処理(フラックス除去)を徹底
  • 接着
    • エポキシ系構造用接着剤:耐衝撃性・耐熱性重視部品向け
    • アクリル系・シリコーン系:防水・気密性が求められる用途に対応

溶接や接着後は、応力緩和熱処理やエッジ部の補強を実施し、強度と耐久性を確保します。

調達・納期・輸出に関する疑問

Q9:アルミ鋳物の納期はどのくらいかかりますか?

納期は鋳造方式・数量・加工内容で変動しますが、一般的な目安は以下の通りです。

  • 砂型鋳造(小ロット):設計確定後約15~25営業日
  • 重力鋳造(金型使用):設計確定後約20~30営業日
  • ダイカスト(大量生産):設計確定後約30~45営業日

これにCNC切削や表面処理を追加すると+5~10営業日が必要です。繁忙期や仕様変更がある場合はリードタイムが延びるため、図面・数量はできるだけ早めに確定すると短縮につながります。


Q10:日本向け輸出(ベトナム現地対応)は可能ですか?

はい。ダイワ軽合金ベトナムは日本向け輸出に豊富な実績を持ち、以下の体制を整えています。

  1. 輸出許可・通関手続き:ベトナム現地で必要なライセンスを取得済み
  2. 検査・梱包:JIS規格・ISO9001準拠の検査後、海上・航空いずれの輸送にも耐える梱包を実施
  3. 輸送モード:LCL/FCLによる海上便および航空便を選択可能

年平均約200コンテナを取り扱い、専任チームのトレーサビリティ管理により納品後クレーム率は0.5%以下を維持しています。


Q11:アルミ鋳物の価格帯は?単価に影響する要素とは?

単価は以下の要素で大きく変わります。

  • ロット数量:増量で型代を分散、単価低減
  • 合金種:AC4C(¥1,200~¥1,800/kg)、ADC12(¥900~¥1,300/kg)など
  • 形状・肉厚:複雑形状や薄肉部品は加工工数増で割高
  • 仕上げレベル:機械加工・表面処理込みで+10~30%

例:砂型鋳造かつ機械加工なしの中型部品(約1kg)であれば¥2,000/個から、ダイカスト大量生産品は¥500台も可能です。


Q12:リードタイム短縮や緊急対応はできますか?

可能です。主な短縮策は以下の通りです。

  1. 並行工程:型製作と同時に設計レビューや素材手配を進行
  2. 簡易型・治具活用:量産型より省力化した簡易型で先行試作
  3. 既存型の再利用:同一形状の既存金型を用い、即生産を開始

緊急対応ではプレミアム料金を前提に、最大30%の工期短縮が可能です。お急ぎの案件もお気軽にご相談ください。

よくある失敗と成功事例から学ぶ

【成功事例】日本設計+ベトナム生産によるハイブリッド調達

ある日本企業A社では、アルミ鋳造部品を国内で3Dプリンタ(立体造形装置)による試作検証し、形状や公差を事前確認したうえで図面をベトナム工場へ展開しました。現地では砂型鋳造とCNC切削加工(コンピュータ数値制御加工機)を並行して実施。結果として、試作から量産までのリードタイムを従来比で約40%短縮し、コストも約20%削減に成功しました。ポイントは、国内設計チームと現地生産チームの役割分担を明確化し、早期から密なコミュニケーション体制を構築したことです。

【失敗事例】鋳造特性を無視した設計ミス

B社は薄肉・複雑形状のアルミ鋳造部品を設計段階でそのまま金型製作依頼しました。しかし、鋳造方式ごとの許容肉厚や冷却制御を考慮しなかったため、鋳造品に気泡(巣)やヒケ(収縮空洞)が多発。後加工で公差を合わせようとしたものの、手戻りが増えて納期が大幅に遅延し、コストも膨張しました。この教訓から、設計時にはJIS規格の肉厚ガイドラインや冷却レートの管理ポイントを鋳造専門家とすり合わせることが不可欠であると分かりました。

Data Box|鋳物FAQにまつわる指標まとめ

タイトル データ 出典(リンクあり)
アルミ鋳物の平均納期 15~30日(製法による) 日本鋳造協会「鋳物生産統計」https://www.jfs.or.jp/
金型製作費用の目安 30万~100万円/型 日本鋳造協会「鋳物生産統計」https://www.jfs.or.jp/
よくある素材 AC4C、AC2A、ADC12(JIS規格) Genspark「アルミ鋳物の種類と特徴」https://genspark.jp/metal-casting/aluminum-casting-guide
寸法公差 ±0.5〜1.0mm(砂型)、±0.2mm(金型) Genspark「アルミ鋳物の種類と特徴」https://genspark.jp/metal-casting/aluminum-casting-guide
ベトナム→日本納品対応企業数 約120社(2024年時点) JETRO「ベトナムの輸出制度と実務」https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/trade_01.html

まとめ

アルミ鋳造部品は、軽量性・高強度・優れた耐食性を兼ね備え、複雑形状の一体成形や省工程化によるコスト削減が可能な加工法です。一方で、鋳造方式ごとの寸法公差や肉厚設計、巣・ヒケ対策、初期型代のコントロールなど、専門的な知見が欠かせません。本記事のFAQを活用し、試作・小ロットから量産、表面処理、さらには日本向け輸出まで一貫体制で管理すれば、品質とコストの最適なバランスを実現できます。特に、国内設計とベトナム生産を組み合わせたハイブリッド調達や、鋳造条件の最適化によるトラブル防止は、成功事例でも鍵を握るポイントです。実績あるパートナーと緊密に連携し、正確な知識をもとに最適な製造フローを構築してください。

関連するコラムもご覧ください!