アルミ鋳造、鋳物、金型を一貫請負

アルミ化による製品の軽量化事例:燃費向上と環境負荷低減

地球温暖化対策や各国で強化される燃費規制は、自動車産業をはじめ製造業にとって避けて通れない課題です。特に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)はバッテリー搭載量が増えるため、従来以上に軽量化が求められています。車両の軽量化は燃費向上と環境負荷低減を同時に実現する切り札であり、今後の競争力を左右する重要要素となっています。

数値的な効果も明確です。国土交通省の報告によれば、車両重量を100kg削減すると燃費が3〜5%向上し、CO2排出量を8〜12g/km低減できるとされています【国土交通省 自動車燃費基準】。国際エネルギー機関(IEA)の統計でも、軽量化は輸送部門のCO2削減策の中で最も効果的な手段のひとつに挙げられています【IEA Transport Outlook】。

そこで注目されるのがアルミ合金です。鉄の約1/3という軽さを持ちながら、高強度化技術の進歩により安全性も確保。さらにリサイクル率は90%以上と高く、再生アルミの利用でCO2排出を最大95%削減できる点でも、環境負荷低減に直結する素材といえます。

アルミ化による軽量化の仕組み

異材からアルミ鋳物への置換

従来の鉄・鋼部品をアルミ鋳物に変更するだけで、重量は約1/3に削減可能です。特に「鋳包み」技術により部品を一体化することで、軽量化と同時に工程削減やコスト低減も実現できます【カルモ鋳工】。

薄肉化技術

最新の鋳造技術により、最薄1mmの薄肉化が可能になりました。従来の抜き勾配を削減して不要な肉をカットする設計も進み、数%単位での軽量化が燃費向上へ直結します。

高強度アルミ鍛造

弱点とされた強度不足も、高速恒温鍛造により克服。鉄の約81%の強度を持ちながら鉄比1/3の軽量化を実現し、EV向けステアリング部品(タイロッドエンド)に量産採用されました【戸畑ターレット工作所】。

自動車産業におけるアルミ軽量化事例

EV・HV部品での採用

エンジンブロックやシリンダーヘッドをアルミ化することで20〜30%の軽量化が可能。結果として燃費向上・電費改善を同時に達成し、排出ガス削減にも貢献します。

車体構造の革新

テスラ社が導入した「ギガプレス」は、数百点あった車体部品をアルミ一体鋳造で数十点規模に削減。これにより剛性確保と軽量化を両立し、航続距離の延伸=燃費向上に直結しました。

その他の応用例

電動アシスト自転車筐体(マグネシウム・アルミ併用)、鉄道車両のアルミボディによる20%以上の軽量化、航空機でのアルミリチウム合金活用など、幅広い分野で「軽量化による燃費向上と環境負荷低減」が進展しています。

環境負荷低減とサステナビリティ

リサイクル性

アルミのリサイクル率は90%以上。再生アルミを用いることでCO2排出を95%削減でき、燃費向上と環境負荷低減の相乗効果を生みます。

製造工程の省エネ化

ダイカストや3Dプリント鋳型の活用で省エネ化を実現。大和軽合金ベトナムでは現地生産により輸送エネルギー削減とコスト競争力を両立しています。

今後の展望

EV向けバッテリーケース、モーターハウジングへの適用拡大、さらに炭素繊維強化アルミ(CFRA)の研究によって、軽量化・燃費向上・環境負荷低減の効果は一層強まる見込みです。

成功事例

  • 量産アルミタイロッドエンド
    鉄比1/3の軽量化・強度81%を確保。実車採用により航続距離が延び、燃費向上に直結。
  • テスラ社のギガプレス
    大型アルミ一体鋳造で部品点数を削減。軽量化と剛性強化を同時に達成し、製造効率と環境負荷低減にも貢献。

失敗事例

  • 高級車向け特殊アルミ部品は、恒温鍛造コストが鉄の2倍以上で量産困難。
  • 薄肉化の特殊金型は軽量化に成功したがコスト増を招き、市場採用は限定的。

まとめ

アルミ化は、燃費向上と環境負荷低減を両立できる持続可能な技術です。自動車産業を中心に拡大し、電動化・複合材料研究と融合することでさらに進化していくでしょう。

調達戦略の面では、ベトナム生産+日本式品質管理というモデルが、コスト競争力と信頼性を兼ね備えた最適解として注目されます。

総じてアルミ化は、次世代モビリティ社会に不可欠な「軽さと環境性能」を実現する基盤技術であり、製造業における競争力強化の決め手となるでしょう。

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