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アルミ鋳物の価値を最大化する熱処理技術:T6・T7処理の完全比較とベトナム調達のメリット

アルミ鋳造部品の調達において、「図面通りの寸法が出ない」「加工後に歪みが発生する」「強度が想定より低い」といった課題に直面したことはないでしょうか。これらの問題の多くは、実は鋳造そのものではなく、その後のプロセスである「熱処理」の選定ミスや管理不足に起因しています。アルミニウム合金、特にAC4CやAC4CHといった代表的な材質において、熱処理は最終的な機械的性質の約50%以上を決定づけると言っても過言ではない重要な工程です。

特に、高強度を求める「T6処理」と、寸法安定性を重視する「T7処理」の違いを正確に理解し、用途に合わせて適切に指定することは、製品品質の向上だけでなく、不良率低減によるトータルコストダウンに直結します。

本記事では、Daiwa Aluminum Vietnamが長年培ってきた技術的知見に基づき、T6とT7のメカニズムの違い、数値データに基づく性能比較、そしてベトナム拠点での高品質な熱処理調達のメリットについて徹底解説します。設計段階からの最適化とサプライチェーンの強靭化を目指す調達・購買責任者の皆様に、現場で役立つ判断基準を提供します。

アルミ熱処理の基礎知識:なぜ「熱処理」が必要なのか?

アルミニウム合金の強化メカニズム

鋳造されたままの状態(F材)のアルミニウム合金は、金属組織が不均一であり、本来のポテンシャルを発揮できていません。熱処理を行う主な目的は、「析出硬化(せきしつこうか)」と呼ばれる現象を利用して、合金の強度と硬度を飛躍的に高めることです。

具体的には、アルミニウム母材の中に添加元素(マグネシウムやシリコンなど)を高温で溶け込ませた後、急冷して過飽和状態にし、その後適切な温度で再加熱することで、微細な化合物を均一に析出させます。これにより、金属の変形を防ぐ「転位の移動」が阻害され、強度が向上します。

一般的なAC4C合金の場合、熱処理を行わないF材と比較して、適切な熱処理(T6)を施すことで引張強さは約1.5倍から2倍、耐力は約2倍以上に向上します。

主要な熱処理記号(質別)の解説

JIS規格(JIS H 0001)では、熱処理の状態を表すために「質別記号」が定められています。製造現場で頻繁に使用されるのは以下の3つです。

  1. F(製造のまま): 鋳造後に特別な熱処理を行わない状態。強度は低いが、コストは最も安い。
  2. T6(溶体化処理+人工時効硬化): 最大の強度と硬さを得るための処理。
  3. T7(溶体化処理+安定化処理): 強度を多少犠牲にして、寸法安定性と耐熱性を高める処理。

次章では、特に混同されやすく、選定が重要となるT6とT7の違いについて深掘りします。

T6処理とT7処理の決定的な違い:データで見る強度と寸法安定性

T6処理:最強の強度を求めて

T6処理は、アルミニウム鋳物において最も一般的かつ標準的な熱処理です。そのプロセスは以下の2段階で構成されます。

  1. 溶体化処理: 製品を535℃±5℃といった高温で4時間から8時間保持し、添加元素を固溶させます。その後、60℃〜80℃の温水などで急冷(クエンチ)します。
  2. 人工時効硬化: 急冷後、150℃〜170℃程度で6時間から10時間再加熱します。

この処理により、GPゾーンと呼ばれる微細な原子の集合体が形成され、硬度と引張強さがピークに達します。自動車の足回り部品やブラケットなど、高い機械的強度が要求される部品に最適です。しかし、急冷に伴う残留応力が内部に残りやすく、後の切削加工工程で「歪み」として顕在化するリスクがあります。

T7処理:寸法安定性と耐熱性の追求

一方、T7処理は「過時効処理」とも呼ばれます。溶体化処理と急冷まではT6と同じですが、その後の時効処理の温度設定が異なります。

  • 安定化処理(過時効): 200℃〜240℃という、T6より高い温度で4時間から6時間加熱します。

この高温処理により、析出物が粗大化・安定化します。その結果、最高硬度はT6と比較して10%〜15%程度低下しますが、内部の残留応力が大幅に解放されます。これにより、切削加工時の寸法変化が極めて少なくなり、高温環境下での使用でも寸法の経時変化(あとかれ)が起きにくくなります。

【比較表】機械的性質と残留応力の違い

一般的なAC4CH(アルミニウム-シリコン-マグネシウム系合金)における、T6とT7の特性比較は以下の通りです。

特性項目 T6処理(最大強度) T7処理(寸法安定) 比較コメント
引張強さ 225 MPa 以上 200 MPa 程度 T6の方が約10〜15%高い
耐力(0.2%) 180 MPa 以上 150 MPa 程度 降伏点もT6が高い
伸び 2% 以上 3〜5% T7の方が粘り強い(靭性が高い)
残留応力 大(加工歪みリスク有) 極小 T7は加工精度の維持に有利
耐熱性 150℃以上で強度低下 200℃でも安定 エンジン周りはT7が有利

用途別選び方:失敗しないスペック選定の基準

自動車部品・構造部材(T6推奨ケース)

T6処理を選択すべきなのは、「多少の歪みリスクを許容しても、軽さと強さを極限まで追求したい」場合です。

  • サスペンションメンバー、コントロールアーム: 走行中の高負荷に耐える強度が必要。
  • 油圧ポンプボディ: 高圧に耐える耐力が必要。
  • 二輪車用ホイール: 強度と耐衝撃性のバランスが重要。

これらの部品では、設計段階でリブ形状を工夫することで歪みを抑制しつつ、T6の高い強度を享受するのが一般的です。

精密エンジン部品・大型筐体(T7推奨ケース)

T7処理を選択すべきなのは、「ミクロン単位の加工精度が必要」または「高温環境で使用される」場合です。

  • シリンダーヘッド、エンジンブロック: 燃焼熱による高温(200℃付近)にさらされるため、T6では使用中に強度が低下し、寸法が変化してしまいます。T7であらかじめ組織を安定させておく必要があります。
  • 大型の半導体製造装置部品: 切削量が大きく、加工後の残留応力解放による反りが致命的となるため、T7による応力除去が必須です。
  • ピストン: 高温かつ激しい往復運動に耐えるため、熱安定性が最優先されます。

ベトナムでの高品質熱処理:コストダウンと品質の両立

Daiwa Aluminum Vietnamの熱処理設備と管理体制

海外調達、特にベトナムでの調達において懸念されるのが「熱処理品質のバラつき」です。炉内の温度分布が不均一だと、同じロット内でも強度にばらつきが生じます。

Daiwa Aluminum Vietnamでは、以下の体制で日本同等の品質を保証しています。

  1. 最新鋭の連続式熱処理炉・バッチ炉の導入: ワークのサイズや生産量に応じ、最適な炉を選択。炉内の温度分布測定(TUS)を定期的に実施し、規格である±5℃の範囲を厳守しています。
  2. 水温管理の徹底: 溶体化処理後の焼入れ(クエンチ)において、水温は冷却速度を左右する重要因子です。チラー設備により水温を60℃〜80℃の範囲で一定管理し、季節による品質変動を排除しています。
  3. トレーサビリティ: 熱処理チャート(温度記録)は全ロット保管され、いつ、どの炉で、どのような温度履歴を経たかが完全に追跡可能です。

日本品質×ベトナムコストの実現

熱処理は、電気炉を使用するため電力コストが加工費の大きなウェイトを占めます。ベトナムの産業用電気料金は日本と比較して安価であり、エネルギー集約的な熱処理工程を持つ鋳造品において、大幅なコスト競争力を発揮します。

さらに、Daiwa Aluminum Vietnamでは「鋳造→熱処理→ショットブラスト→機械加工」までを社内一貫生産しています。

他社で見られるような「熱処理だけ外部委託」というプロセスがないため、横持ち運賃がゼロであるだけでなく、熱処理後のリードタイムを平均3〜5日短縮可能です。また、万が一加工段階で歪みが発見された場合でも、社内で即座に熱処理条件へフィードバックを行い、改善サイクルを回すことができます。

まとめ

アルミ鋳物の性能を決定づける熱処理技術。T6処理は「最高強度」を、T7処理は「寸法安定性と耐熱性」を提供します。

  • 強度が最優先の足回り部品などにはT6
  • 精密加工が必要なエンジン部品や大型筐体にはT7

この使い分けが、製品の信頼性を高め、トータルコストを最適化する鍵となります。

Daiwa Aluminum Vietnamは、ベトナム・ホーチミン近郊におけるアルミ鋳造のスペシャリストとして、日本品質の熱処理技術とベトナムのコストメリットを融合させたソリューションを提供しています。鋳造方案の設計段階から熱処理の選定に関与させていただくことで、加工歪みのない、最適な製品作りをサポートいたします。

現在、日本からの金型移管や、サプライチェーンの分散化をご検討中の企業様は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の調達課題を解決する具体的なプランを提示させていただきます。

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