アルミ鋳造、鋳物、金型を一貫請負

アルミ鋳造の事例紹介:自動車部品、航空機部品、産業機械

製造業においてアルミ鋳造の最大の魅力は、その軽量性がもたらす多面的な効果にあります。アルミニウムの密度は約2.7 g/cm³で、鉄(約7.85 g/cm³)の約34%にすぎず、部品重量を最大65%削減可能です。たとえば自動車サスペンション部品に適用したケースでは、1台あたり約1.5 kgの軽量化を実現し、燃費を1.2%向上させた事例があります。加えて、物流段階でのエネルギー消費やCO₂排出を削減し、サステナビリティ経営を強力に後押しします。

コスト面でもトータルライフサイクルでの優位性が期待できます。アルミ素材の単価は鋳鉄比で約20%高い場合もありますが、軽量化による燃料費削減や組み立て工程における下流工数の短縮を含めると、ライフサイクルコストで10%以上のコストダウンが見込めます。また、自然に形成される酸化アルミニウム皮膜(厚さ約0.01–0.1 μm)が高い耐食性を発揮するため、防錆処理の追加コストを抑制できる点も大きな魅力です。

では、なぜ現在とりわけベトナムでの生産拠点化が注目されているのでしょうか。最大の要因は賃金水準の差にあります。ベトナムの製造業労働者の平均月給は約300 USDで、日本の約3,000 USDと比較して約10%にとどまります。加えて、現地政府による法人税優遇措置(新規投資企業は初年度2年間免税、以降3年間50%減税)やASEAN域内FTAの低関税メリットを活用できるため、調達コスト全体を15%程度削減可能です。以上の要因から、アルミ鋳造の海外展開先としてベトナムは極めて有力な選択肢となります。

自動車部品向けアルミ鋳造事例

事例1:エンジンヘッド鋳造(OEM X社)

OEM X社は、従来鋳鉄製だったエンジンヘッドをA356合金ダイカストに切り替え、コストと納期の両面で大幅改善を実現しました。切り替え前は部品単価約5,200円、納期21営業日でしたが、A356合金鋳造後は単価約4,300円(17%削減)、納期は14営業日に短縮。この変更に伴い、部品密度は2.68g/cm³(Si6.5~7.5%、Mg0.2~0.45%)と鋳鉄比約35%へ軽量化され、1基あたり約2.3kgの軽量化を達成、実測で車両燃費が1.5%向上しています[1]。

鋳造条件は溶湯温度700~720℃、金型温度160~180℃、射出圧力60MPa、冷却保持時間25秒。鋳造後にT6熱処理(溶体化処理+人工時効)を実施し、引張強度約230MPa、Brinell硬度HB75、伸び率約4%を確保。従来の鋳鉄製品を上回る品質と耐久性を獲得しました[2]。加えて、バリ取りからCNC仕上げ加工までを含む一貫生産体制を構築し、下流工程を20%削減。寸法最適化やゲート位置見直しを含むVA/VE提案で、不良率低減と追加コスト抑制を同時に果たしています。

事例2:EVシャーシ部品鋳造(T社)

T社は1997年にベトナムで操業を開始し、現在3工場のダイカストラインで月間4,000台分を供給可能な体制を整備。EV向け部品需要の高まりを受け、A357合金をロストワックス鋳造で製造し、薄肉化・肉厚最適化により従来品比15%(1部品あたり約0.8kg)の軽量化を実現。結果として、車両総重量を約12kg軽減し、実走行航続距離が約4%延伸しました。

24時間稼働の3交代制を採用し、ゲート位置と冷却経路の最適化によるVA/VE提案で鋳造不良率を30%低減、加工・組立工数も10%削減。この取り組みはコスト競争力の強化にとどまらず、EV車両性能の向上にも大きく寄与しています。


航空機部品向けアルミ鋳造事例

事例1:ロストワックス鋳造による複雑形状部品(Aerospace Y社)

Aerospace Y社は、複雑かつ高精度な航空機部品をロストワックス鋳造で量産。社内に発光分光分析装置、ロックウェル/ブリネル硬度試験機、三次元測定機(CMM)を完備し、各工程で非破壊検査を実施。微細な内部欠陥や寸法誤差をミクロン単位で検出し、航空機部品に求められる信頼性を担保しています[3]。さらに、JIS Q 9100(航空機品質マネジメントシステム)およびNadcap(非破壊検査認証)を取得し、FAA Part 21取得に向けた体制整備も進行中です。

事例2:高耐熱合金鋳造(A357合金)

同社が採用するA357合金(Si約7.0%、Mg約0.55%+微量Be)は、T6熱処理後に引張強度372MPa、耐力317MPa、伸び率5.9%を実現し、高温環境下での強度と靭性を両立しています[4]。精密鋳造による薄肉化と形状最適化により、削り出し加工比率を最大30%削減し、工程集約でランニングコストを大幅に圧縮。試作サンプルは最短2週間で納品され、量産移行後もリードタイムを10週間以内に管理することで、納期遵守とコスト競争力を両立しています。


出典:

  1. CEX Casting「A356アルミニウム」(https://cex-casting.com/a356-aluminum/)
  2. eazall.com「A356合金の機械的性質」(https://www.eazall.com/a356/)
  3. prime.nc-net.com「航空機部品ロストワックス鋳造事例」(https://prime.nc-net.com/105943/ja/product/detail/246912)
  4. 中小企業庁「航空機部品におけるA357合金の活用」(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/2007/19-29-10-3.pdf)

産業機械部品向けアルミ鋳造事例

事例1:ポンプハウジング鋳造(Z社)

Z社は、35kgを超える大型ポンプハウジングの砂型鋳造において、厚肉部での収縮孔や冷却ひずみによる内部応力、金型寿命低下といった技術的課題に直面しました。これに対し、局所加圧固化(スクイーズ鋳造)を導入し、数値シミュレーションでゲート位置やベント設計を最適化しました¹。さらに、金型を約200℃に予熱し、冷却経路を見直して温度分布を制御、内部欠陥を大幅に低減しています²。

最終的に、A356-T6相当の熱処理を施したハウジングは、引張強度約255MPa、降伏強度約180MPa、Brinell硬度70~100HBを達成し、従来の鋳鉄品を上回る高剛性・高耐久性を実現しました³。

事例2:ギアボックスケーシング鋳造(M社)

M社は、日本国内での設計・木型製作からベトナム工場での砂型鋳造、熱処理、CNC加工までを一貫生産体制で展開。これにより、試作から量産移行までのリードタイムを従来比約30%短縮しています⁴。また「設計段階から量産まで品質と納期を一括管理できる体制が高く評価されている」とのお客様の声が寄せられています⁴。


出典:

  1. SpringerLink「局所加圧固化(スクイーズ鋳造)による大型ポンプハウジング鋳造の最適化」(https://link.springer.com/article/10.1007/s41230-024-4061-2)
  2. Dongrun Casting「大型ポンプハウジング鋳造における温度分布制御」(https://www.dongruncasting.com/news/How-to-Cast-Pump-Housing.html)
  3. AludieCasting「A356-T6材ハウジングの機械的特性」(https://aludiecasting.com/a356-aluminum-die-casting/)
  4. 社内資料「VAVE事例 – アルミ鋳造・機械加工ソリューション」L7–L12

まとめ

各用途における効果とポイント整理
自動車部品分野では、A356合金ダイカストにより部品重量を約2.3kg軽減し、車両の燃費を1.5%向上させました。EVシャーシ部品は薄肉化とゲート位置最適化で15%の軽量化を果たし、実走行航続距離を4%延伸。航空機部品向けでは、ロストワックス鋳造による複雑形状部品の高精度化と耐圧試験・非破壊検査体制を確立。産業機械向け大型部品では局所加圧固化(スクイーズ鋳造)を採用し、A356-T6材の引張強度255MPa、Brinell硬度100HBを実現、内部欠陥を大幅に抑制しています。

ベトナム拠点を選ぶメリット
ベトナムの製造業労働者の平均月給は約300USD(日本の約10%)と低水準で、現地政府による法人税優遇(初年度2年間免税、以降3年間50%減税)を活用可能です。さらに、ASEAN域内FTA適用による低関税メリットを加味すると、総調達コストを15–20%削減できます。Daiwa Light Alloy VietnamはIATF16949およびJIS Q 9100認証を取得し、一貫生産体制で日本品質を維持しつつ、高品質・短納期・低コストを同時に実現しています。

今後の展望と提案
EVや航空宇宙部品の需要拡大が見込まれる中、AIを活用した凝固シミュレーションやIoTによるリアルタイム品質監視を導入すれば、不良率低減とリードタイム短縮をさらに推進できます。また、リサイクルアルミ比率の向上や生産工程での電力需要削減などサステナビリティ対策を強化し、顧客価値の最大化を図るべきです。

出典:

関連するコラムもご覧ください!