アルミ鋳造、鋳物、金型を一貫請負

アルミダイカストの事例紹介:自動車部品、家電製品、電子機器

ダイカスト(Die Casting)とは、金型に溶融したアルミニウム合金を高速・高圧で注入し、冷却・固化させる鋳造技術です。一度金型を製作すれば、数十秒で成形が可能となり、自動車部品や家電、電子機器などの大量生産に最適です。また、複雑な形状への対応力と高い寸法精度、滑らかな表面仕上げを一工程で実現できる点も大きな特長です。

特にアルミダイカストは、薄肉成形(Thin-wall casting)が可能なため、部品の軽量化に寄与します。これにより、製品全体の重量を20~30%軽減し、エネルギー効率や動作速度が向上します。また、アルミニウム合金特有の耐食性や熱伝導性にも優れ、厳しい使用環境下でも安定した性能を発揮します。さらに、アルミは高いリサイクル性を誇り、スクラップ回収・再融解による環境負荷の低減にも貢献します。

こうしたメリットにより、製造業界ではコスト削減と品質維持・機能向上の両立が求められています。大和軽金属ベトナムでは、日本国内比20~30%の製造コスト削減を実現し、現地調達率70~80%を達成することで輸送費とリードタイムを短縮しています。また、JBIC調査(2022年、195社回答)では、中長期的にベトナムへの投資拡大を検討する企業が97%に達すると報告されています 。

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自動車部品向けアルミダイカスト事例

オイルパン(ベトナム生産によるコスト競争力)

エンジン下部に位置するオイルパンは、潤滑油の貯蔵と循環を担う極めて重要な部品です。アルミダイカストの一体成形技術により、複雑なリブ形状や薄肉部品を短いサイクルで量産できるため、切削加工と比べて工程数や材料ロスを大幅に削減します。大和軽金属ベトナムでは現地調達率を70~80%に高めることで、人件費や輸送費を抑制し、国内生産比で約20~30%のコストダウンを実現しています。

ハイブリッド車向けコンデンサーケース(軽量化と熱管理向上)

ハイブリッド車用コンデンサーケースは、冷媒ラインを保護しながら効率的に熱を放散することが求められる部品です。熱伝導性の高いADC12合金を用い、複雑な冷却フィンや薄肉形状を一体成形することで、鋼板組立品と比べて部品点数を減らしつつ約20%の軽量化を達成。これにより車両の燃費向上にも寄与しています(jfs.or.jp、shinnichikogyo.co.jp)。

大型部品の耐食性・品質保証(JIS適合例)

足回り部品やエンジンカバーなどの大型鋳造部品は、耐食性と寸法精度が欠かせません。マリンエンジン向けに培った前処理技術と塗装工程を一貫生産で適用することで、高い耐食性を確保。さらに、日本工業規格(JIS)適合証明を取得した品質保証体制のもと、厳格な寸法公差管理と機械的特性の安定供給を行い、信頼性の高い大型部品を提供しています。

家電製品向けアルミダイカスト事例

ジューサー・ミキサー筐体(アート感と量産性)

家庭用ジューサーやミキサーの外装筐体では、「美観」と「量産性」の両立が大きな課題です。アルミダイカストでは、滑らかな曲線やシャープなエッジを一体成形できるため、複雑な意匠を金型だけで再現可能。壁厚1.5 mmの薄肉設計により、従来比で製品重量を約20%削減しつつ、必要な剛性を確保します。さらにショットブラスト+アルマイト処理で高級感のあるマット調表面を実現し、月産10万台のラインで安定供給が可能です。

掃除機本体フレーム(薄肉化と剛性確保)

コードレス掃除機のフレームには、軽量性とハンドリングの良さが求められます。一例として、壁厚1.2 mmの薄肉ダイカスト部品を採用したケースでは、プラスチック筐体よりも約15%軽量化を達成。薄肉化しながらも、曲げ剛性を落とさないリブ形状の最適配置で、床面への落下試験(高さ1.5 m)や繰り返しの衝撃試験にもクリアしています。こうした薄肉成形は、そもそもダイカストの得意領域でもあり、製造コストの増加を抑えつつ高い強度を得ることが可能です。

LED照明器具ケース(熱放散とデザイン性)

インテリア向けLED照明器具では、放熱性能とデザイン性が両立されなければなりません。パナソニックの配線ダクト取付型モデルXAS1531Nでは、ADC12合金製のアルミダイカストセードを採用し、光束400 lm、消費効率97.5 lm/W、演色性Ra90を実現。セード背面にフィン状リブを一体成形することで放熱面積を約30%向上させ、LED素子の温度上昇を抑制。結果として寿命2万時間超の長寿命化と、均一な光学特性を両立しています。

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電子機器部品向けアルミダイカスト事例

電子機器部品は、精密性・量産性・高い放熱性を同時に満たすことが求められます。アルミダイカストならこれらを一体で成形できるため、OA機器や通信機器、IoT端末まで幅広く採用されています。以下、用途別の代表事例をご紹介します。

薄型ノートPCシャーシ(ファンレス放熱設計)

ノートPCの薄型化には、筐体自体をヒートシンクとして機能させるファンレス設計が有効です。ADC12合金の熱伝導性を活かし、300×200×15mm、壁厚1.5mmのシャーシを一体成形することで、放熱面積を従来比30%拡大し、CPU温度を平均10℃低減します。さらにブラスト処理とアルマイト仕上げで表面粗さRa1.6μm以下を確保し、放熱性能と外観品質を高い次元で両立しました。

電流測定用筐体(工法替えによるコスト30%削減)

従来の砂型鋳造から特許製法ダイカストに切り替えた180×170×60mmの電流測定筐体では、CT6級の寸法精度と表面粗さRa12.5μmを実現。ダイカストカセットシステム導入により金型費用を50%削減し、トータルコストを30%低減しました。加えて製造リードタイムも半分に短縮し、年400個の小ロット生産でも採算性を確保しています。

スマートフォン用リアカバー(高精度表面仕上げ)

リアカバーは薄肉かつ高級感が重要です。ADC12合金で壁厚0.8mmを達成したモデルは、重量約15gに抑えつつ、公差±0.1mmのCT6級精度で成形可能。射出後にバレル研磨と化成処理を施し、表面粗さRa0.8μm以下の鏡面仕上げを一工程で再現。数万台の量産でも安定した高品質を維持しています。


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品質管理と欠陥対策

気孔・収縮ポロシティの低減手法

鋳造欠陥のうち、ガス気孔と収縮ポロシティは部品の強度低下やオイル漏れを招くため、徹底した抑制が必要です。ガス気孔は溶湯中の窒素・酸素が鋳型内に閉じ込められることで発生するため、窒素パージやアルゴンブローによる脱ガス処理、真空鋳造の導入、金型ベントの最適設計が有効です。収縮ポロシティは凝固時の体積減少が原因なので、リザーバー設計の最適化、射出重量の調整、冷却速度(5~15 °C/s)の制御によって鋳型内を十分に満たし、ポロシティ発生を抑えます。

表面粗さ・寸法精度管理フロー

表面粗さは用途に応じRa1.6~6.3 μmを目安とし、主に金型摩耗やベント不足が原因で悪化します。定期的な金型研磨、ベントおよび冷却水路の点検、成形後のショットブラストやバレル研磨を組み合わせることで安定した仕上がりを維持します。寸法精度は、CAEシミュレーションを用いて冷却収縮(例:100 mm→約98 mm、約2%縮小)を見越した金型設計のほか、射出圧力・溶湯温度・冷却時間(30~60秒サイクル)の標準化がポイント。生産中はノギスやマイクロメーター、CMMでインライン測定を行い、異常時には即時パラメータ調整でバラつきを最小限に抑えます。

統計的工程管理(SPC)と非破壊検査活用

SPCでは射出圧力、溶湯温度、冷却速度などの主要データを管理図で監視し、工程能力指数(Cp、Cpk)の維持を図ります。異常値が検出されるとアラームを発し、自動で金型温度や射出速度を補正します。加えて、ラジオグラフィー(X線:100~400 kV)、超音波検査(2~10 MHz)、渦電流検査といった非破壊検査を組み合わせることで内部欠陥を損傷なく検出し、歩留まり低下を未然に防止。これらを統合的に運用することで、高品質なアルミダイカスト部品を安定的に供給できます。

サステナビリティとリサイクル

アルミリサイクル率とCO₂削減効果

日本国内では、2024年度の飲料用アルミ缶リサイクル率が99.8%に達し、そのうち75.7%が再び缶材として循環利用されています。これにより、資源としてのアルミニウムが高い効率で回収・再生されていることが分かります。世界全体でも、これまで製造されたアルミの約75%が再利用され、その多くが依然として製品として活用されています。加えて、スクラップ由来のアルミを用いると、一次製造と比べて必要エネルギーは約5%に低減し、CO₂排出量も92~95%削減可能です。これらのデータは、製造業全体の温室効果ガス排出抑制に大きく寄与しています。

サプライチェーンにおけるESG対応

近年、アルミニウム業界では「Aluminium Stewardship Initiative(ASI)」への参画が進み、サプライチェーン全体での責任ある調達と脱炭素化が強化されています。丸紅とリオティントが推進する共同イニシアチブでは、顧客企業が長期にわたり責任あるアルミ製品を安定的に調達できる体制を整備。また、UACJは2022年にASI認証を取得し、360以上の企業・組織と協働してトレーサビリティ基準やGHG削減目標の策定・監査を実施中です。さらに国際アルミニウム協会(IAI)はCOP28で新たな温室効果ガス削減報告イニシアチブを発表し、業界全体の環境負荷低減をより一層透明化・義務化しています。これらの取り組みは、調達先企業のESG評価向上やグリーン調達認証取得を支援し、最終製品ユーザーの信頼獲得にもつながります。


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まとめ

事例から見る導入効果のポイント
自動車部品では、ベトナム拠点の現地生産により20〜30%のコスト削減を実現し、薄肉化技術で部品の剛性と熱管理性能を向上させました。家電製品では、複雑な意匠を金型一体成形で忠実に再現し、月産10万台を安定供給する体制を整えています。電子機器部品では、ファンレス放熱設計や鏡面仕上げを採用し、製品の耐久性とユーザビリティを高めています。

今後の市場展望と選定時の注意点
米中対立の長期化とサプライチェーン再編が進む中、中国依存からのリスク分散策としてベトナムへの調達先多様化が不可欠です。また、ASI認証など国際的イニシアチブへの対応や、スクラップ由来アルミの利用によるCO₂排出量の92〜95%削減を評価軸に、トレーサビリティと高い再生率を持つサプライヤーを選定することが求められます。

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